読書:江戸の夢びらき

松井今朝子

初代-二代目市川団十郎と歌舞伎の荒事の始まりを、妻恵以の目から描く

上方には坂田藤十郎近松門左衛門

荒事とは魂の憤り、それは遺恨もあれば慚愧もある

悪辣な敵に向けられ、不甲斐ない自身にも向けられる

さらにはこの世界のあらゆる理不尽を断じて許せぬ激しい憤りが総身に充ち満ちて

炎のごとくに燃えさかる様を、神仏の忿怒の相を借り発現するのが荒事だった

父親の偉大さに近寄れなかった倅が、自分なりの芸を身につけるまでの葛藤