読書:山のパンセ

串田孫一

この時代によく雪山を登っていた様子がよくわかる

以前は「小さいこの存在の中に宿る生命を充分に楽しませることが出来た。有頂天になって悦ぶ生命を抱いて山から下ってきた。登る前の私はもうどこにもいなかった。山を歩きながら過去を切り落として行った。」が最近は「登る前の自分のままで戻ってくる。」「これが心の底にじかに触れる心細さと言ってはいけないのだろうか。」

「僕たち好んで山へ登る者は、冬の来るのを待つというよりもこうして、待ちきれないように冬をさがしに行くようなことをする。」

山の中で何を考えているのかと訊ねられ困ってしまう

何も考えていなかったわけではないが、覚えてもいない

「山では自分の行動の質が変わるように、思考の質も変わるのでしょう」

山で拾ってきた小さな意志を眺めながら、巨大な岩石や宇宙や、広大な運動を想像する哲学者の思考の深さに驚く