読書:虚像の道化師 ガリレオ

東野圭吾
1.幻惑す まどわす
 マイクロ波照射で、念を送ったと思わせる、悪徳宗教
 トリック自体は予測がすぐつく
 それをストーリーに組み立てる構成力や、謎解きの推理力、人物像の作 り込み等、短編の中に東野の力が十分に現れている
 内海刑事は出番なし
2.心聴る きこえる
 まだ実用化されていない、電磁波を使った脳内音声装置
 東野の東野たる所以
 動機と兄が残した研究途中の装置というのは少し説得力に欠けるが
 北原刑事の思いと重ね合わせた犯人や被害者の心理描写はさすが
 草薙刑事は、今回はほとんど入院中
3.偽装う よそおう
 なかなかいい決着 湯川も味なことをする
 籍を入れてくれない母親の夫と、不倫を悪びれずにする母親
 子供の頃受けた母親の夫からの性的暴行
 短編なので仕方ないが、背景が後付になるのは仕方ないか
 刑事が一緒の結婚式や、大雨、土砂崩れでの通行止など設定に少し無理もあるが、湯川の推理の鋭さを示すのに、なんら支障はない
 内海刑事は登場せず
4.演技る えんじる
 一度刺されて死んだ胸に、ナイフを刺して、役者として殺人者を体験する
 ヨリを戻そうとする男への未練より、役者としての体験を深めたい
 恐ろしきは女の執念といったところか
 「刺してあった」という言葉だけから犯人を疑う推理力に驚嘆