読書:幻夏

太田愛

3人が活躍するシリーズ2作目

知らずに3作目を先に読んでしまったが、全く問題なかった

相馬の幼なじみ尚と拓兄弟の深い愛情 それと深く交わる相馬の幼い心が胸を締め付ける

まるでテレビドラマを見ているように、細かく導線が張り巡らされて、徐々に明らかにされていくストーリー

わくわくどきどきさせる展開 脚本家の書く小説たるや一瞬も目が離せない

しかも冤罪事件や、法曹界の矛盾や闇に光を当てている

「人の心は硝子のように壊れたりはしない。血と肉と骨で出来た身体と同じように柔らかい人の心は、時間をかけてゆっくりと捩れる。」

4作目は出ないのか

読書:江戸の夢びらき

松井今朝子

初代-二代目市川団十郎と歌舞伎の荒事の始まりを、妻恵以の目から描く

上方には坂田藤十郎近松門左衛門

荒事とは魂の憤り、それは遺恨もあれば慚愧もある

悪辣な敵に向けられ、不甲斐ない自身にも向けられる

さらにはこの世界のあらゆる理不尽を断じて許せぬ激しい憤りが総身に充ち満ちて

炎のごとくに燃えさかる様を、神仏の忿怒の相を借り発現するのが荒事だった

父親の偉大さに近寄れなかった倅が、自分なりの芸を身につけるまでの葛藤

読書:天上の葦

太田愛

シリーズ3作目 といっても2作目はまだ読んでいない

天を指さして、スクランブル交差点で死んだ正光

何を指したのか調べるという磯辺の依頼を受け、3人がそれぞれの得意を生かして調査が進む

背景に戦前戦中の、報道統制やそれによって不幸に落ちた国民

その再現を狙う者たちの陰謀が暴かれてくる

喜重らの、戦争への道を阻もうとする(いわば憲法を守ろうとする)決意

「戦争という大火になる前に、あちこちで燃え始めた火がまだ小さいうちに消していかなければ」

反戦を声高に叫ぶより、心にじっくりとしみいる内容になっている

若い人たちにどれだけ伝わってくれるのか

「犯罪者」でもあったが、話が進むにつれ、(都合よく)善意の協力者がつぎつぎ現れてくれることに救いがある

読書:ケーキの切れない非行少年たち

宮口 幸治

犯罪を犯した少年も大人も、反省すれば、更生の道が開けるのかと思っていたが、

反省すらできない、知的ハンディのある子供たちの問題が明らかにされた

これでは犯罪がなくならない そもそもなぜ犯罪をしてはいけないかが理解されないという事だ

学校教育に立ち返って軽度の知的ハンディのある子供たちを見つけ、支援する必要性が理解できた

読書:グレート・ギャツビーを追え

ジョン・グリシャム  村上春樹

久々のグリシャム しかも村上春樹の訳

法廷ものではないが(新しいのは法廷ものが少ないような)あいかわらずのスリルとサスペンス

女流作家のマーサーが主人公と思って読んでいたが、実は書店主ブルース・ケーブルが主人公で、金を獲得する物語だった

初版本やオリジナル直筆原稿のコレクションの世界 全くの興味の外の世界だった

市場として成り立っているようだ

グリシャムの弱い者や正義の側に立っていた位置が変わった?

しかし小説としての面白さには、まったく衰えを感じさせない

二人のこれからがまだ続いていって、何かに発展する予感

映画:サイレント・トーキョー


テーマは? 主張は?

「世界では戦争があり、日本でもテロの危険性があるのに、日本人は平和ぼけしているんじゃないか」ということ?

ストーリーとしては面白かったが、日本の若者が、「あほ」っぽく描かれすぎていないか 設定もすこし無理があるよう

問題意識のある者も多く見かけるし、その未来を信じたい

読書:大一揆

平谷美樹

一揆というと、打ち壊しや略奪などのイメージだったが、実は組織化されていて、政治的な要求を掲げ、侍との交渉もあったという事実に正直驚いた

中には命助のように、優秀な政治的能力を持った者や、小野のような参謀、権乃助のようなアジテーターもいた事だろう

江戸末期の藩の改革や、できなければ弱体化にも繋がったらしいことが読み取れた