読書:アクティベイター

冲方丁

スパイ映画さながら

動作の心理的深読み

出会ったことのない小説 詳細な調査や検索の後がうかがえる

核を積んだ中国ステルス爆撃機の亡命、日本の官庁職員や、その黒幕、アクティベイターなる日米管理のエージェント、現実社会には表に出ないが、本当はあるのではと思わせる描写

背筋が寒くなる現実があるのかも知れないと引き込まれる

読書:透明な螺旋

東野圭吾

湯川が養子に出されていた子だったとは!

園香と母の千鶴子、その母親の境遇が、湯川の生い立ちと重なっての行動だったのだとは想像される

しかし実は秀美と園香とは血縁ではなかった

最近の作は謎解きがやや単純になってきた傾向があるようにも思える

その分心の奥底にしみいるような哀愁や、逆にほのぼの感が深まったような

「あの時・・・・どちらかを選べといわれた時、僕はこう答えるべきでした。そんなことはできない、どちらも僕の親だ、と」

読書:罪の轍

奥田英朗

松本清張を彷彿とさせる、昭和の刑事もの

吉展ちゃん事件をモチーフに

当時初めての報道協定や、広域捜査、警察の縦割りの不備、テレビを通して全国を揺るがす事件となった背景が描かれている

子どもの殺人事件は痛ましい

映画:キネマの神様


山田洋二監督89作品目 松竹100周年記念

ゴウ役だった志村けんがコロナで逝去 急遽沢田研二が代役に

小津安二郎東京物語の撮影風景 北川景子原節子としての主役風景が似合う

監督目指すゴウの挫折 それを支えようとする淑子

コロナ渦の現代に飛び、アルコールにおぼれるゴウ(太ったジュリーを見たくなかった)

孫の力を借り、昔の脚本を手直し コンクールで優勝

映画への思いを取り戻す中で最後を迎える

昔懐かしい映画の世界と、それがままならないコロナの現代

その中でも監督や、その他関係する皆の映画への重いが伝わってくる

読書:なぜ秀吉は

門井 慶喜

朝鮮出兵のわけは?

見方の恩賞となる土地のため、貿易のため、日本の民が外国の奴隷にならないようにするため、名を残すため、気まぐれ?

大名の結束、国家秩序の強化と大名の戦力削減 と家康は考えるが

秀吉は言う 自分は樹 生まれながらの欲に従っているだけ

家康はそれを見て、秀吉は戦いのない人生を、どう扱えばいいのかわからないのではないかと

お茶々を草千代評して 

 世間のいわゆる人なみの幸せというやつは、何かに鈍感であり、かつ何かに無意識であることではじめて得られるまぼろしの宝

 なのにこの娘には、この人間社会そのものにおける自分の位置がくっきりと見えてしまっている こういう人間は、だいたい幸福にはなれぬ

確かにそうとも言える

読書:マルベリー作戦 上・下

ダニエル・シルバ

CNNエグゼクティヴ・プロデューサーとしての出世作

第二次世界大戦時、連合軍がドイツに対し、イギリスからフランスへの上陸侵攻作戦 カリー湾かノルマンディーか

その選択の決め手を巡る、イギリス潜入ドイツスパイと、その摘発に当たるMI5雇われ担当官とのせめぎあい

ヴィカリーやキャサリンは架空人物ながら、実に生き生きとして魅力的だ

物語のスリルある展開も満点

ヴィカリーの「彼は優秀な秘密情報官だった。そして生来それに適していた。虚栄心がないし、大衆の称賛も爵位も求めなかった。人知れず骨を折り、勝ち誇る気持ちを内に秘めていることに完全に満足していた。彼がじっさいに何をしているかを誰ひとり知らないという事実が気に入っていた。」の下りはほんとに共感